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気ままに生きます

【ない】真夜中のアクセル、目的はみそきん

   8/10、一世を風靡したあの"みそきん"が復活するという。

 我が子の誕生のように待ち望んでいる者、あえて斜に構える者、反応はさまざまだ。踊る阿呆に見る阿呆。転売するド阿呆。猫も杓子も皆みそきん。たかがカップラーメンで、日本は束の間の平和を手にすることができる。

 僕は、食というものがまったく分からない。トップ○リューのカップ麺でも、うまいうまいと満足する人間だ。僕の舌は、安上がりだ。300円のカップラーメンなんて、よほどいいこと悪いことがない限り気が引ける。

 でも、僕はみそきんを食べてみたいと思った。信者の狂信的なお布施でも、グルメ家気取りの味批評をしたい訳でもない。強いて言えば、衝動的な深夜テンションだろうか。どうせなら、ヒカキンの手のひらで滑稽に踊ってみよう。たまには感情のまま流されたって、いいではないか。

 そう思ったからには、善は急げ。僕はさっそく運転席に乗り込んで、アクセルペダルを踏み込む。はやる気持ちが右足に伝わらないよう、理性で必死に抑えながら。

 こうして8/12午前1時、世界一阿呆な旅人が一人、夜に放たれてしまった。

 

 

 僕は、ある程度の推測を立てていた。

 おそらく、みそきんは駅前や住宅街のセブンには既に売り切れているのではないか。人が集まる場所は、確実に売れ行きはよいはずだ。子どもが集まりやすい場所ならなおのこと。子どもの駄々に負けて、夜に最後の一仕事だと、コンビニで買い込むスーツ姿のお父さんが簡単に目に見える。

 だから、僕はあえて明かりの少ない方に車を走らせる。周りが田んぼだらけで、人より稲穂の数が多い場所。そこのコンビニの方が、案外残っているに違いない。車でわざわざ"みそきん"を買いに来る、賢明で愚かな人はいないだろう。

 「すなわち、目指すべきは田舎のコンビニだ!」

 

 こういうどうでもいい時にだけ、妙に頭が働く。名推理をした名探偵の爽快感に似た感覚が、僕のぼんくら頭を駆け巡る。日々色々なことで使う妄想力が、ここでも遺憾なく発揮されたってわけだ。

 

 

 真夜中のバイパスというのは、商業施設どころか街灯すらほとんどない。代わりに、地平線が分からない暗黒とした田んぼや、魔物の手を揺らす立派な木々が僕らを出迎える。地を揺らすトラック、慎重な軽自動車、何かに焦るあの車だって、夜の世界をヘッドライトで切り裂きながら進んでいく。

 モノクロームの中で、異様に色を放つ看板が現れる。その正体は、「7」……。セブン・イレブンだ!

 

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 光に集まる虫の瞬発力でハンドルを切り、だだっ広い駐車場に車を止めてさっそく入店。冷房の効きすぎた店の中を、ウロウロとウロウロと……。

 ついに見つけたカップラーメンのコーナー、そこにはみそきんが……

 

 ……ない!?

 

 商品棚にがらんと何もない不自然な空白、そこには「みそきん、売り切れました」と店員直筆のポップが。

 なるほど、一筋縄ではいかないな……。いくら田舎と言っても、ここは一応車通りはあるバイパス沿い。トラックの運ちゃんが、お盆前の御褒美で"みそきん"を奮発した可能性だってある。理由をいくら夢想しても、結局あるのは「ない」という事実だけ。

 ないと分かったからには、もうここに用はない。車は暗いバイパスに戻って、再びヘッドライトの波に乗る。そして今度は、片側一車線の県道に折れる。車すらほとんど通らない県道沿いなら流石にあるだろうと高を括って、意気揚々とアクセルを踏みしめていった……。

 

 

 ない……。 ない……。 どこ探しても、ない……!!

 出発してから、一体どれだけの時間が経ったのだろうか。夏の夜空も、そろそろ明ける準備ができてきた頃。僕はコンビニを見つけては駐まり、発進しては駐まり、発進しては駐まり、何かに取り憑かれたように延々と繰り返していた。

 おそらく5,6店舗ぐらい立ち寄っただろう。驚くほど広い駐車場に、誰一人として駐めていない所だってあった。でも、どこのコンビニも、奇妙な空間が当てつけのように期待した僕を嘲笑っていた。

 これほどやって、収穫はゼロだ。やたら休憩の多い夜のドライブをしただけだった。ヒカキンの人気は僕を無意味な旅に連れ出したのに、結局僕の妄想力を木端微塵に打ちのめした。僕に残っていたのは推理が外れた敗北感と、寄ったついでに買った慰めのクーリッシュだけだった。

 

 帰ろう。無様な旅人に、朝日を浴びる権利はない。ハンドルさばきは、ぐんと重めに。アクセルワークは、少し荒めに。

 フロントガラスの左手に、白み始めた空が見える。バイパスの景色は、もう暗黒ではない。幻術を解かしていくように、田園を緑色に染め上げていた。

 

 

 

~P.S.~

 僭越ながら、本記事を執筆中に聴いた3曲ピックアップして、ご紹介させていただきます!

 なんでこんなことやってるかはこちらをご参照ください!

 

Jamiroquai Cosmic Girl

実は『Virtual Insanity』より曲もPVも好き…♡


www.youtube.com

 

藤井風青春病

「僕は自分が思うほど強くはなかった」「僕は自分が思うほど弱くはなかった」

青春時代の自分に聴かせてやりてえ…


www.youtube.com

 

Mega Shinnosuke桃源郷とタクシー

サビの韻を踏んだナンセンスな歌詞が最高…!


www.youtube.com

 

 ぜひ皆さんの執筆中に聴く”マイ音楽”も教えてください♪

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